こんにちは。
ラッセルベッドフォードの澤柳です。
皆さん突然ですが、キャッシュフロー計算書がどのような資料なのか理解していますか?
一部の方にとっては、会計監査の時に作成されている資料のような、経営に全く関係ないものとして捉えられています。
しかし、キャッシュフロー計算書は本来毎月作成して、経営者が毎月読むべき資料です。
前回のメールで少しキャッシュフローについて触れましたが、キャッシュフローがなぜBSの話に繋がるのかわからないという方も何名かいらっしゃいました。そこで今日はかなり基礎的な話になりますが、キャッシュフロー計算書とは何か、経営者として何を見るべきなのか、を一緒に考えていきたいと思います。
キャッシュフローの話は奥が深いので、今日は以下の3つに論点を絞りました。
1 キャッシュフロー計算書の目的
2 キャッシュフロー計算書の記載内容
3 キャッシュフロー計算書のプラスマイナス
少し会計的な側面の強い内容ですが、本日も根気強くお読み頂ければ幸いです。
まず初めに、キャッシュフロー計算書の目的についてです。
キャッシュフロー計算書はお金の流れが書いてある資料だということはわかると思いますが、それを何の目的で使用するかはその使用者によって異なります。
私が経営者にとって重要だと思う目的の一つは「今月の利益がどこへ消えたのかを理解する」ということです。
PLに表示される利益と実際に手元に残る現金は一致しません。
そこには様々な要因、例えば売上が売掛金としてまだ回収されていなかったり、来月の仕入れの先払いをしていたり、現金支出のない費用が発生したり・・・など、本当にたくさんの要因があります。
だからこそ、PLと手元に残った現金の因果関係を理解するための資料としてキャッシュフロー計算書を読むのが経営に非常に役立ちます。
例えば、キャッシュフロー計算書を読むことで、
儲けた利益は本当に現金として残らない性質のものだったのか。
来月や再来月儲ける利益も同様に手元に残らないのか、それとも当月がイレギュラーだったか。キャッシュフローのどこに問題があるか。どのように改善するべきか。・・・といった経営判断ができるようになります。
それでは次に、キャッシュフロー計算書の記載内容を簡単に解説します。
月次のキャッシュフロー計算書は「当月純利益」
年次のキャッシュフロー計算書は「当期純利益」
からスタートします。
そして、以下の3つのお金が増えたり減ったりする原因別にBSの科目を並べ替えて作ります。
1 営業活動によるキャッシュフロー
2 投資活動によるキャッシュフロー
3 財務活動によるキャッシュフロー
この3つの原因は一般的な区分けですので、会社によっては4つや5つなどもっと細かく分けてキャッシュフロー計算書を作成しているところもあります。
営業活動によるキャッシュフローは、文字通りその会社の事業活動に関わるお金の動きであり、BS科目では売掛金や買掛金、前受金、在庫、など多くの科目が該当します。しかし通常は、投資活動と財務活動以外のBS科目として覚えておけば問題ありません。
投資活動とは、固定資産への投資に関するもの財務活動とは、借入金などの資金調達に関するものとして理解しておけば大丈夫です。
BS科目がなぜキャッシュフローと関係があるのかという点についてですが、まず先月と今月のBSの現金科目の差額が今月のキャッシュフローである、と言うことができます。当たり前の話ですが、先月100万円の現金が手元にあり、今月120万円手元にあれば、今月キャッシュフローがプラス20万円あったということになります。
次にBSについてですが、BSには現金科目以外にもたくさんの科目があります。
そして、常にBSの左側(資産科目)とBSの右側(負債・純資産科目=資本科目)がバランスしています。
そうすると、今月の現金科目が20万円増えた時に他のBS科目も動いていて、それでもBSの左と右がバランスしている状態になっています。
資本とは「どこから事業資金を調達したのか」
資産とは「その資金をどのように使ったのか」
をそれぞれ意味しています。だから常に左右バランスしているわけです。
つまり、常にBSは左右がバランスしている訳ですので、逆から見れば、現金以外のBS科目が動いた結果今月の現金科目が120万円になった、と考えることもできます。
例えば、資産・資本総額が先月と今月と比べて20万円増えていれば、資本が20万円増えたことで現金が20万円増えたと推測できます。
もし、資産・資本総額が先月と今月と比べて同額であれば、この現金20万円の増加は他の資産科目が現金化したものだと推測することができます。
このようにキャッシュフロー計算書では、BS科目の先月と今月の変動分を今月のキャッシュフローへの影響要因として使います。
また最初に記載したように、月次のキャッシュフロー計算書は「当月純利益」からスタートしますが、これも同様にBS科目の純資産の変動分として捉えられています。
そして最後の重要なポイントとして、キャッシュフロー計算書で表記される数字のプラスマイナスについてです。
BS科目の変動額を使用してキャッシュフロー計算書を作成しますので、例えば売掛金が先月400万円あって今月500万円になっていればプラス100万円が変動額です。
しかし、キャッシュフロー計算書上では「マイナス100万円」と記載します。
なぜなら資金という観点であれば、売掛金が増えるということは調達した資本をその分だけ現金以外の資産に使用される、と考えられるからです。
先ほど説明した通り、BSは常に左(資産)と右(資本)がバランスしています。
BSの表すものは、あくまでも
資本=どこから事業資金を調達し、
資産=その資金をどのように使ったのか
です。
なので現金以外の資産科目が増えれば、資本が同じ額増えない限り手元の資金は減りますので、キャッシュフロー上も同様に現金が減る影響を与えると考えられます。
よって、キャッシュフロー計算書上では売掛金が100万円増えれば「マイナス100万円」と記載されます。また、売掛金が増えるということはその分だけ回収できておらずお金が手元にない状態である、と感覚的にも理解はできると思います。
逆に買掛金が増える場合、買掛金は負債科目であり、BSの右側(資本)側にありますので、資本が増える=事業資金が増えるということになり、キャッシュフロー計算書上ではプラスの影響を与えられると表記されます。
先月と今月を比較して買掛金が増えているとその増えた分だけお金を支払っていないので、お金が手元に残ることも感覚的にも理解できると思います。
以上、今回はキャッシュフロー計算書の内容の基本的解説をさせて頂きました。
難しく感じた方も易しく感じた方もそれぞれいらっしゃると思いますが、この内容は非常に重要なものです。
キャッシュフロー計算書をそもそも見るのが苦手だという方は、まずこの記事を全て理解することから始めてください。キャッシュフロー計算書を理解せずして資金管理はできません。
またキャッシュフロー計算書に関する記事をいくつか作成していきますので、当月稼いだ利益がどこに消えたかを最低限確認できるようになって頂ければ嬉しいです。
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今回は以上となります。
今週も一緒に頑張っていきましょう!