マレーシアでの暗号資産に関する税務

Posted on 27/08/2026

こんにちは。 

ラッセルベッドフォードの澤柳です。 

「マレーシアには暗号資産の税金がない」。これは半分正しく、半分は危険な誤解です。 

ビットコインで利益が出ても課税されない、という話を鵜呑みにして、後日LHDN(内国歳入庁)から問い合わせを受ける——そうした例が、静かに増えています。 

まず前提から整理しましょう。 

マレーシアには個人に対する一般的なキャピタルゲイン税(資産譲渡益課税)がなく、暗号資産だけを対象とした専用の税法も存在しません。 

暗号資産は法定通貨ではなく「デジタル資産」と位置づけられ、課税されるかどうかは資産そのものではなく、その人がどう使ったかで決まります。 

ここが最初のポイントです。 

分かれ目は「投資」か「取引(trading)」かです。 

長期保有を前提に、たまに売却する程度であれば投資とみなされ、その譲渡益は原則として非課税になり得ます。 

一方で、頻繁かつ組織的に、利益を目的として売買を繰り返せば、それは事業(business)とみなされ、所得税法のもとで所得課税の対象になります。 

個人であれば最高30%の累進税率、法人であれば通常24%が適用されます。 

同じビットコインでも、非課税にもなれば全額課税にもなる——差を生むのは資産ではなく行動なのです。 

LHDNはこの線引きに、英国判例に由来する「事業性を示す指標(badges of trade)」——取引の頻度、保有期間、売買の動機、資金調達の方法など——を用います。 

LHDNのガイドラインでは、この指標が8項目に整理されています。 

加えて、マイニング(営利目的で行う場合)やステーキング報酬といった活動も、多くの場合「所得」として扱われる点に注意が必要です。 

そして見落とされがちなのが、執行の現実です。 

2024年6月、LHDNは暗号資産取引からの税の漏れを取り締まる特別作戦「Ops Token」を実施しました。 

国内の規制対象取引所の取引データにアクセスし、申告内容と突き合わせる体制がすでに整っています。 

「キャピタルゲイン税がない=申告しなくてよい」という理解は、アクティブトレーダーにとって高くつく思い込みになりかねません。 

日本人駐在員にとっての含意は二重です。 

日本では暗号資産の利益は雑所得として最高約55%で課税されます。 

それと比べれば、マレーシアの「投資」扱いは確かに軽いといえます。 

しかし、マレーシアの税務上の居住者に該当するか(暦年182日基準)、日本側の居住者判定や出国時課税、そして国外で得た利益の取り扱い(マレーシア国内で受領した場合の課税の論点)まで含めて考えないと、片方の国だけを見て安心するのは危ういのです。 

二国間をまたぐ以上、判断は「両にらみ」が原則になります。 

結局のところ、暗号資産の税務は「資産の性質」ではなく「その人の行動の記録」で決まります。 

長期保有と時折の売却であれば、記録はおのずと投資家の物語を語ります。 

頻繁な売買・報酬・トークンの回転が並べば、それは事業者の物語になります。 

どちらの物語を残すことになるかは、日々の記帳の積み重ね次第です。 

取引履歴が「散らかっていて説明しづらいもの」になる前に、早めに専門家へ相談されることをお勧めします。 

さて、9月のセミナー内容が決定致しました。 

『マレーシア源泉徴収税実務セミナー』を9月24日(木)14時00分~15時00分にオンラインにて開催する予定です。 

ご興味がある方は是非以下フォームよりお申込み下さい。 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

今週も一緒に頑張っていきましょう。