BSの話はBS科目でしかできない

Posted on 27/10/2025

こんにちは。

ラッセルベッドフォードの澤柳です。

先日、とある会社の社長と借入金の返済計画についてディスカッションしていたところ、その社長からこんな言葉を聞きました。

「長期借入金の返済原資は利益+減価償却費 だから来期の資金繰りは問題ない」

皆さんはこの考え方に違和感を感じますか?長期借入金の返済原資は、本当に利益+減価償却費でしょうか?

確かに一部の会計の本にもそう書いてあります。

今期の損益の最終結果である税引後利益に、費用になったけれども実際にはキャッシュが出ていかなかった減価償却費分をプラスした額が返済原資になる、という考え方です。

しかし、これは私は間違いだと思います。BSの科目である長期借入金の返済原資は、あくまでも現金。つまり、BSの科目です。

一方で利益と減価償却費というのはPLの科目です。PLの科目でBSの科目は返済できません。借金の返済はお金でしかできないのです。

何度かこのメルマガでもお伝えしておりますが損益と現金の動きは必ずしも一致しません。

例えば利益や減価償却費が多くても、流動資産の売掛金や在庫の増加によって、すぐに現金にならない資産になっている場合があります。

稼いだ利益が機械設備等の固定資産に使われ、現金として残らないこともあるでしょう。そのような状況では、利益が上がっていても返済原資となるお金は手元に大して残りません。

しかし、「長期借入金の返済原資は利益+減価償却費」というのも全く的外れではありません。正しく言えば、「長期借入金は同じくBS科目の利益剰余金(当期利益の累計)と減価償却費の累計である減価償却累計額で相殺する」です。

最終的には現金で長期借入金を返すことには変わりありませんが、例えばその現金を短期借入金で調達して長期借入金の返済に充てるということは良い状態ではありません。

現金が増える根源はやはり本業の利益であり、利益剰余金が中心となる純資産を大きくして返済能力を上げる努力が必要になります。

しかしその一方で、純資産を増やすだけで返済能力が上がるというわけでもありません。

ちょうど1年前、レナウンという1902年創業の老舗アパレル企業(東証一部上場)が倒産したニュースを皆さんはご存じでしょうか?

東京商工リサーチの発表によれば、レナウンは2020年5月15日支払期日の手形8,700万円の決済資金を調達できず、決済不能となる恐れが出てきたことから、債権者が民事再生を申し立てた、と伝えています。

この会社の倒産については、実は色々と疑問点はありますが、ここでは財務的な論点のみ取り上げることとします。

レナウンは、キャッシュフロー上の問題から支払いが滞り、経営破綻してしまいました。

しかし、レナウンの倒産時(第16期)のBSを実際に見てみると、その純資産額は153億円、総資産(または総資本)が323億円なので、自己資本比率は47%とかなり優良企業でした。

さらに、流動資産が237億円で流動負債が107億円であったため、流動比率としても理想的な200%以上の数字を保っていました。現預金残高はというと53億円、在庫が86億円、そして売掛金が134億円となっていました。

つまり、総資産の68%が在庫と売掛金という状態であり、現預金は総資産の16%しか持っていませんでした。

コロナによる売上の低迷で在庫が現金化できず売上債権も回収が滞ったことで手元の現預金が枯渇したのです。

この事例からもわかるように、会社は利益が出ているからとか自己資本比率が高いから大丈夫だということは決してありません。

また、逆に赤字だから倒産するということでもありません。

倒産する理由はたった一つ、お金が無くなるからです。お金が無くなり、支払いが滞れば会社は倒産します。

BSをどのような形にしていくのか。来月、再来月、現金はいくら手元に必要か。来期のPLの見込みから今期いくら運転資金を用意しておかないといけないか。・・・

BSに関する検討事項は山ほどあります。

本来は、PLと同じくらいBSも分析して頂き、特にキャッシュフローがうまく回っているかを毎月、できれば毎週確認して頂きたいです。

もし、皆様がキャッシュフローの計画を今後作成する、または既に作成している場合は、その計画がPLだけをベースにして作成されていないかも今一度確認してください。

BS科目の返済はBS科目でしかできません。キャッシュフローもまたしかり、現金というBS科目の話はBS上でしかできないのです。

さて、既にご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、2026年度マレーシア予算案が2025年10月10日(金)に発表され、弊社でも予算セミナーを12月9日(火)に開催予定ですが、先ずは要点解説ウェビナーを11月19日(水)14時00分~15時00分に開催することが確定しました。

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今回は以上となります。 

今週も一緒に頑張っていきましょう! 

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