マレーシア印紙税ニュースレター第4回をお届けします。
今回は、2025年1月1日より施行された印紙税調査フレームワーク(Stamp Duty Tax Audit Framework)を踏まえ、「マレーシア印紙税調査の実務対応」をテーマに解説します。
これまで印紙税は、法人税調査の中で付随的に確認されることが多い税目でした。しかし、自己申告制度の導入とあわせて、印紙税単独での調査体制が明確化され、企業にとってのリスク管理の重要性が一段と高まっています。
■ 1.どのような種類の調査があるのか
フレームワークのもとでは、主にリスクベースで調査対象が選定されます。調査の形態としては、書面ベースで行われるデスクリビュー型の確認と、税務当局が訪問して実施するフィールド調査があります。
すべての企業が一律に対象となるわけではありませんが、自己申告制度のもとでは「申告内容の正確性」が前提となるため、過少申告や未申告の疑いがある場合には選定されやすくなります。特に、高額契約、不動産関連取引、グループ内ローン契約、海外契約の持込などは注目されやすい領域です。
■ 2.何年遡って調査されるのか
原則として、税務当局には最大5年間の調査権限がありますが、一般的には過去3年間を対象に調査が行われます。
自己申告制度開始後の期間はもちろん、それ以前の文書についても未スタンプや過少納付があれば指摘対象となり得ます。印紙税は契約単位で課税されるため、複数年にわたるグループ内契約や長期契約は、まとめて確認されるケースが想定されます。
■ 3.どのような書類の提出が求められるのか
調査では、対象期間中の契約書一式の提出を求められることがあります。不動産売買契約、賃貸借契約、ローン契約、株式譲渡関連文書、NDA、雇用契約など、課税対象となり得る文書が広く確認されます。
加えて、以下のような補足資料の提示を求められることがあります。
・契約締結日を証明する資料
・海外契約の場合の国内持込日を示す証拠
・電子契約の受信・保存記録
・印紙税額の計算根拠資料
・関連する社内承認書類や取締役会議事録
電子契約が増えている現在、「いつマレーシア国内で使用されたか」を説明できる体制があるかどうかは重要なポイントです。
■ 4.指摘された場合のペナルティ
調査の結果、未納や過少申告が判明した場合には、本税に加えてペナルティが課されます。
期限後申告の場合は、遅延期間に応じて未納税額の10%または20%(最低RM50またはRM100)が加算されます。
さらに、自己申告制度下で過少申告が認定された場合には、不足税額相当額の特別ペナルティや、場合によってはRM1,000からRM10,000の罰金が科される可能性があります。
また、申告書未提出や調査非協力の場合にも罰金規定があります。単なる計算ミスであっても結果として過少申告となれば対象になり得るため、事前の内部確認が重要です。
■ 5.企業にとって重要なポイント
印紙税調査への備えとして企業が意識すべき点は、大きく三つあります。
第一に、契約締結時点で印紙税判定を行う仕組みを持っているかどうかです。締結後にまとめて確認する運用では、漏れが生じやすくなります。
第二に、海外契約や電子契約の管理体制です。持込日や使用開始日を説明できない場合、税務当局と見解が対立する可能性があります。
第三に、グループ内取引の棚卸しです。親子間ローンや管理費契約などは金額が大きくなりやすく、調査時のインパクトも大きくなります。
印紙税は税額自体が小さいと考えられがちですが、調査で複数年分が指摘されれば、追徴額は決して軽微とは言えません。さらに、未スタンプ文書は法的手続に影響を及ぼす可能性もあるため、税務と法務の両面から管理する必要があります。
今回施行された印紙税調査フレームワークは、自己申告制度とセットでコンプライアンス強化を進める明確なメッセージといえます。今後は「指摘されてから対応する」のではなく、「調査を前提に備える」姿勢が求められます。
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今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今週も一緒に頑張っていきましょう。
