OECDがマレーシアにGST再導入を提言 ―「OECD Economic Surveys: Malaysia 2026」のポイント

Posted on 30/07/2026

こんにちは。 

ラッセルベッドフォードの澤柳です。 

OECD(経済協力開発機構)は2026年7月28日、「OECD Economic Surveys: Malaysia 2026」を公表し、財政基盤の強化に向けて物品・サービス税(GST)の再導入と燃料補助金の段階的廃止を提言しました。 

あわせて、個人所得税の課税ベース拡大と税務行政の強化も求めています。 

同報告書はクアラルンプールでの発表会で、OECD経済局・国別研究部門のLuiz de Mello局長がその内容を提示しました。 

マレーシアはOECD非加盟国ですが、政策レビューや経済審査で継続的に協力する「アクティブ・パートナー」の立場にあります。 

この報告書の提言は独立した助言であり、法的拘束力はありません。 

政府は内容を尊重しつつ、採否は主権的に判断します。 

それでは、なぜ今このような提言が出されたのか。 

背景には、マレーシアが2028〜2030年頃の高所得国入りを控えるなかで、高齢化・社会保障・教育に伴う歳出圧力が高まる一方、税収がGDP比13%未満と低い、という構造問題があります。 

中所得国の罠を回避し財政の持続可能性を確保するには、より強固で幅広い税基盤が必要だ、というのが今回の一貫した問題意識です。 

OECDの主な提言は、以下の通りです。 

  • GSTの再導入(幅広い課税ベースを持つ消費税) 
  • 化石燃料補助金の段階的廃止と、炭素価格付け(カーボンプライシング)戦略への移行 
  • 個人所得税の課税ベース拡大(税優遇措置の縮小、より広い範囲の個人所得への課税) 
  • 税務行政の一層の強化 
  • 上記に伴う低所得・脆弱世帯への影響は、社会登録(social registry)を活用した的を絞った給付で緩和 

なぜ「SST拡大」ではなく「GST」なのでしょうか。 

現行のSST(売上税・サービス税)について、報告書は、その適用範囲はすでに拡大されてきたものの、物品・サービスへの課税手法としては最も効率的ではないと指摘しています。 

あわせて、税優遇措置を縮小し、より多様な形態の個人所得に課税する余地があるとしています。 

発表会のセッションでde Mello局長は、付加価値税(VAT型)はマレーシアのような開放経済に適していると述べました。 

その理由として、生産・流通の各段階で税が積み上がるカスケード課税を避けられ、企業の競争力維持につながる点を挙げています。 

また報告書は、幅広い課税ベースを持つ消費税は、より安定した歳入源となり、国際的なベストプラクティスに沿った税制につながるとしています。 

このような提言に対し、マレーシア政府は慎重な姿勢を示しています。 

Akmal Nasrullah Mohd Nasir経済相は、GST再導入の前に、まず賃金の引き上げと課税ベースの拡大を優先する方針を表明しました。 

同相は、労働人口のうち所得税を納めているのは約15%にすぎない点を挙げ、賃金が上がらないまま課税を広げれば消費や所得に悪影響が及びかねないと指摘。 

まず賃金と所得をめぐる構造的な課題に対処することが優先だとの立場を示しました。 

政府が賃金・所得の底上げを優先しているため、GST再導入の時期は依然不透明です。 

直ちに実務対応が必要な段階では全くありません。 

しかし、OECDによるGST推奨は今回が初めてではなく、財政圧力が続く以上、中期的な政策オプションとして繰り返し浮上する論点です。 

「いつか来る前提」で備えを進めるのが妥当です。 

サプライチェーンの各段階で仕入が発生する製造業・商社などの日系企業にとって、価格設定・原価構造・会計/ITシステムへの影響が大きいため、早期の情報収集に意義があります。 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

今週も一緒に頑張っていきましょう。