こんにちは。
ラッセルベッドフォードの澤柳です。
会計と聞くと、多くの方が拒絶反応を示し耳や目をふさいでしまいます。
もちろんパーティーの席で会計の話をすれば即座に嫌われること間違いなしですが、仕事の場であっても会計や数字の話は苦手だと思う人が多いのが実情です。
しかし、企業の任務は経済的価値を創造することであり、そしてこれは数字で測られます。
言い換えれば、経済的価値の創造とは、数字を作り出すことだと言えます。だから社長や経営者の任務というのも実は数字を作り出すことなのです。
その数字を作り出す人が数字に弱いという事は決してあってはなりません。
しかし、そもそも一般的な経営や会計で扱う数字は何も高等数学ではありません。
小学校3年生で習う加減乗除しか使いません。
それなのに、簿記や会計学といった複雑で経営に直接使えない“会計”が先行してしまい、
経営の現場では多くの混乱が生まれています。
この混乱を生んでいる一つの大きな原因は、全ての会社が準拠する「会計基準」にあります。会計基準には、国際会計基準(IFRS)や日本会計基準など、各国で定められている様々な基準があり、それに会社は必ず準拠して会計帳簿を作らなくてはいけません。
しかし、この会計基準は何のために作られているかというと、その国の政府機関、株主、
金融機関など、多様なステークホルダーのニーズを満たすためです。そのステークホルダーには経営者や従業員も含まれていますが、そのような多様なニーズを満たすためにはどこかで妥協も生まれます。
そして、その妥協こそ経営者が会計を誤って理解してしまう原因になります。例えば、会計基準が求める原価計算は「総合原価計算」です。総合原価計算では、変動費・固定費関係なく1つの製品を作るのにいくらかかったのかを計算することに重きを置いています。
つまり、BS上に表示する在庫の価値をいかに適切に算出するかが重要視されます。
しかし、何度かメールでも書いているように、儲けるとは固定費を回収する以上の利益を上げることであり、原価という考え方も本来は非常にシンプルなものです。その意味において、直接原価計算という方法を使いPLを見る方が経営者にとっては有益です。
総合原価計算を使用していると売上が低迷して在庫が増えると黒字、売上が上がって在庫が減ると赤字、という経営実態と異なる状況がよく発生します。また、PLは会計年度を基準として作られ、その期間における売上が増えたか減ったか、黒字か赤字かを見るように表示されています。
しかし、それは財務諸表を1年に1度外部のステークホルダーに提出するからそのように
決められているだけであり、本来は12カ月でも15カ月でも経営者にとっては大差ありません。 経営者にとっては、会計年度ごとの比較よりも毎月が決算月であるようにPLを見て、金額の推移、比率の推移、それらの傾向を把握する事の方が有益な情報が得られるでしょう。
例えば、今月3月を決算月と仮定し、
2020年4月~2021年3月を1年とした売上高
2020年3月~2021年2月を1年とした売上高
2020年2月~2021年1月を1年とした売上高
・・・
という様に12カ月間売上高を毎月比較すると、季節変動の影響を除外した売上推移を毎月把握することができます。
これは、会計用語で「年計」と呼びます。
会計年度のクローズを待たなくても、毎月を決算月のように扱うことで、早く現状把握とその改善に着手することができます。
売上高だけでなく変動費や固定費、人件費などそれぞれのカテゴリーごとにおいても年計の考え方は非常に有効です。この時期は多くの問題が「コロナだから」で片付けられがちですが、この年計で見てみるとコロナ前から下がってないか、上がってないかといった情報も確認できます。
会計基準には、その他にも非常に多くの経営に直接関係のない決まりごとが存在しています。
損益は実際発生していないのに年度末時点の残高確定の結果生じる未実現為替差損益。
投資金額を回収できない可能性があると認識した時点で固定資産の価値を減らす減損損失。
来年以降支出が発生するかもしれないという見込みで計上する引当金。
PLは経営成績だとよく言われますが、実際はそんなことはありません。むしろ、2時点のBSの変動分がPLであると言った方が適切なのかもしれません。
会計基準に沿ってPLを作っているだけでは会社の実態は見えませんので、皆さんも経営に
必要な会計が何なのかを意識しながら是非勉強してみてください。
私のニュースレターでも、経営者向けの会計情報を配信し続けていきますので、今後も根気強くお読み頂ければ嬉しいです。
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