こんにちは。
ラッセルベッドフォードの澤柳です。
マレーシア印紙税ニュースレター、第2回をお届けします。
前回は印紙税の概要と制度改正の方向性についてご紹介しましたが、今回はより実務的な内容として、
・どのような文書が印紙税の課税対象になるのか
・自己申告制度への移行期間において、どの文書が自己申告の対象になるのか
・印紙税の申告・納税フロー
について整理してご説明します。
■ 1.マレーシアで印紙税の対象となる主な課税文書
マレーシアの印紙税は、取引行為そのものではなく、一定の法的効力を有する文書(instrument)に対して課税されます。課税文書が作成されれば、その文書の数だけ印紙税が課されるわけです。
実務上、特に頻出する課税文書は以下のとおりです。
【不動産・資産関連】
・不動産売買契約書
・不動産譲渡証書(Transfer)
・賃貸借契約書(Lease / Tenancy Agreement)
・抵当権設定契約書、担保関連文書
【ファイナンス・投資関連】
・金銭消費貸借契約書(Loan Agreement)
・借入・社債関連文書
・株式譲渡契約書、株式譲渡申請書
【商取引・契約一般】
・サービス契約書
・業務委託契約書
・販売契約、販売代理店契約
・秘密保持契約(NDA)
・雇用契約書
日本では印紙税の対象にならないことが多いNDAや雇用契約書も、マレーシアでは法的拘束力がある限り原則として課税対象となる点は、改めて押さえておく必要があります。
■ 2.自己申告制度への移行状況(どの文書が対象か)
2026年1月から、マレーシアの印紙税制度は
自己申告制度(Self-Assessment Stamp Duty System)へ段階的に移行しています。
重要なのは、すべての課税文書が一斉に自己申告になったわけではないという点です。
現在は、文書の種類ごとに自己申告制度の適用が進められている移行期間にあります。
【現在、自己申告制度の対象となっている主な文書】
・賃貸借契約書(Lease / Tenancy Agreement)
・一般的な商取引契約書(サービス契約、業務委託契約 等)
・秘密保持契約(NDA)
・雇用契約書
・証券・株式関連の一部文書
これらの文書については、納税者自身が印紙税額を計算し、オンラインで申告・納付することが必要となっています。
【現在、従来型のIRBによる査定が中心となる文書】
・不動産の所有権移転に関する文書
・高額な不動産売買契約・譲渡証書
・一部の担保・融資関連文書
これらは将来的に自己申告制度へ移行予定ですが、現時点では、IRBによる内容確認・査定が求められる課税文書です。
移行期間においては、「自己申告が前提の文書なのか」「従来型の対応が必要なのか」を文書ごとに切り分けて考えることが極めて重要です。
■ 3.印紙税の起算日(国内作成文書・海外作成文書)
申告期限を判断するうえで重要となるのが、印紙税の起算日です。
【① マレーシア国内で作成・締結された文書】
→ 署名・締結日から30日以内に申告が必要です。
【② 海外で作成・締結された文書】
→ その文書が初めてマレーシア国内に持ち込まれた日が起算日となり、その日から30日以内に申告する必要があります。
紙の契約書だけでなく、
・メールでPDFを受領した日
・電子契約データをマレーシアで初めて受信・保存した日
なども、実務上は「国内に持ち込まれた日」として扱われます。
■ 4.自己申告制度への移行期間における申告・納税フロー
現在の実務フローは、概ね以下のとおりです。
① 課税文書の作成・締結
② 課税対象か否か、自己申告対象文書か否かを判断
③ 適用税率(従価税/固定税)を確認し、印紙税額を算定
④ IRBのオンラインシステムで申告
⑤ 印紙税を納付
自己申告制度下では、「IRBがチェックしてくれる」前提はなく、後日調査で否認される可能性があるという点を常に意識する必要があります。
印紙税自体は少額でも、ペナルティは取引規模に対して相対的に重くなる傾向があります。
移行期間の今こそ、社内での契約管理・印紙税チェック体制を整備することが重要です。
今回は、課税文書の種類と、自己申告制度への移行期間における「どの文書を、どのようなフローで申告すべきか」という実務の整理を行いました。
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今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今週も一緒に頑張っていきましょう。