こんにちは。
ラッセルベッドフォードの澤柳です。
2026年3月27日、マレーシア内国歳入庁(LHDN)は、外国人従業員のマレーシアにおける課税取扱いに関するパブリックルーリングを改訂し、PR No. 2/2026を公表しました(2025年度課税年度以降適用)。
本PRは旧PR No. 8/2011を置き換えるものであり、日本からの出向者・短期派遣者を受け入れる日系企業においては、実務上重要な影響が生じる可能性があります。
(1)「外国税」および「外国所得」の定義の更新
「外国税」(Foreign tax)および「外国所得」(Foreign income)の定義が明文化・更新されました。
特に「外国所得」は、単独クレジット(Unilateral credit)と双務クレジット(Bilateral credit)で定義が異なる点が明確化されています。
単独クレジットの場合:マレーシア外から生じ、かつ外国税が課された所得
双務クレジットの場合:マレーシア内外から生じ、かつ外国税が課された所得
日本・マレーシア間には租税条約(DTA)が締結されているため、日本からの出向者は原則として双務クレジット(Bilateral credit)の適用を受けます。マレーシアで課税された所得に対し日本でも課税が生じる場合には、条約に基づく外国税額控除の計算において、この定義の違いが実務に影響します。
(2)課税原則の明確化:勤務地主義の再確認
雇用所得はその職務が遂行された場所、すなわちマレーシア国内で課税されるという「勤務地主義」の原則が改めて明記されました。雇用契約の締結地や報酬の支払地は関係ありません。
したがって、日本の親会社と雇用関係を維持したまま、マレーシア子会社に出向・出張・派遣されている場合であっても、マレーシアで職務を遂行している期間の報酬はマレーシアの国内税法に基づき課税対象となります。
また、マレーシアでの勤務に付随してサードカントリー(例:タイ、インドネシア等)での業務を行った場合、その期間の所得もマレーシア源泉と「みなされ」、マレーシアで課税される点に注意が必要です。
(3)60日免税の取扱いの明確化:「自動適用」ではなくなった
今回の改訂で実務上最も注意が必要な変更点がこの点です。
マレーシアの所得税法では、1課税年度における外国人の勤務期間が合計60日以下の場合、その雇用所得はマレーシア課税から免除されます。しかし新PRでは、この60日免税は「自動的」に適用されるものではないことが明文化されました。
以下、PR No. 2/2026 第9項より抜粋
「60日免税は自動的に付与されるものではない。免税の申請は確定申告書(Income Tax Return Form)の提出時に行う必要があり、申告者は自らが免税要件を満たしていることを歳入庁長官に対して証明しなければならない。」
「The tax exemption for employment period of 60-days is not automatically given. A claim for exemption can be made at the time of submission of the ITRF, as it is necessary for the foreign nationals claiming exemption to prove to the Director General that they are entitled to qualify for the exemption.」
すなわち、出張・短期派遣でマレーシア入国する外国人従業員が60日以内の勤務であることを理由に申告を省略した場合、免税が認められないリスクがあります。
また、「60日」の算定においては以下の点に注意が必要です。
• 60日の判定は物理的滞在日数ではなく「雇用期間(employment period)」で行う
• 同一課税年度中に複数回にわたって行われた勤務期間も合算される
• 同一課税年度中に複数の雇用主のもとでの勤務期間も合算される
• 「付随業務(incidental duties)」として海外で行った勤務日数も、マレーシア勤務期間に算入される
自動的に免税が適用されないことから、マレーシアに出向・派遣される日本人従業員について、課税年度ごとのマレーシア勤務日数を正確に記録・管理することが不可欠です。
特に複数回にわたる短期派遣が重なる場合は、合算日数の管理が必要です。
免税の適用を受ける場合は、確定申告書の提出と免税申請が必要となりますので、改めて社内フローを確認して頂くことをお勧めします。
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今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今週も一緒に頑張っていきましょう。
