売上倍増でも潰れない会社を作りましょう

Posted on 29/05/2025

こんにちは。 

ラッセルベッドフォードの澤柳です。 

前回は売上が半減した場合にも耐えられるよう財務体質を改善していきましょうというお話をさせていただきました。今回はその逆、つまり売上が増えたら倒産リスクが高まってしまったという状況を避けるための財務に関して考えていきたいと思います。 

売上が増えたけど赤字だったから、、、というオチでは全くありません。 

黒字も赤字も関係なく、売上が増えることで財務体質が悪化することがあります。 

例えば人間でも同じようなことが言えます。 

生活をしていく上で最低限必要な栄養を取れない状況が続けば体に支障が出ます。つまり、栄養不足です。しかし、体が消化吸収できる以上の栄養を取り続けても同様に体に悪影響を及ぼします。これは、栄養過多と呼ばれています。 

どちらもそれ自体は病気ではありませんがバランスの取れた栄養を取れていないと健康障害や様々な疾患を発症させます。会社も人間と同じ様に、「会社が消化できる売上はいくらなのか」「バランスの取れた売上とは何なのか」といったことを考えることが良好な財務体質を考えることにつながります。 

今回もなるべくわかりやすく解説しますので根気強くお読み頂ければ嬉しいです。 

売上を上げ、利益を上げていくことは中長期的に見れば非常に重要なことでありこれこそ財務体質を強化していく本質です。しかし、短期的には話が異なります。 

短期的な売上の増加は時として会社の財務体質を悪化させます。 

売上の増加が会社の財務体質へどのような影響を与えているかを見るために、BSの中のある数値を確認する必要があります。 

それは、運転資金です。 

まず初めに、簡単に運転資金について解説します。 

運転資金とは、通常の事業活動でどうしても発生してしまうサイト負け(*)や在庫保有のために最低限必要な資金のことを指します。 

(*) サイト負けとは売上の回収より仕入の支払いの期限の方が早く、資金が不足している状態 

利益が出ているか否かに関わらず、入金と出金のタイミングのズレによって運転資金は必ず発生します。 

まだぼんやりとした理解でもよいので、とりあえず運転資金はBS上の科目を使って 

の数式で表すことを覚えておいてください。 

一般的にこの運転資金は製造業ではプラス、飲食業や小売業ではマイナスになります。 

運転資金がプラスとマイナスではそれぞれ対応策が異なりますが、今回は運転資金がプラスという前提で話を進めていきます。 

 数字や図を使ってみるとわかりやすいですので 

としてみます。 

すると、運転資金は3(=4+1−2)です。 

図で表すと以下のようになります。 

運転資金はその「資金」という名の通り会社がどこからか調達すべきお金です。 

そして、上の図をBSとして考えれば運転資金はBSの右側に発生していますので、BSの右側の科目である負債(他人資本)、または純資産(自己資本)から運転資金は調達されることを意味しています。 

 それでは話を少し元に戻して売上が倍増した時にこの運転資金はどうなるかを見ていきたいと思います。 

売上が倍増した時、その変動費である仕入も通常は倍増します。よって、売掛金と買掛金はそれぞれ倍増します。 

また、会社がうまく在庫管理をしているという前提であれば、在庫金額は大きく変動しません。 

ここで上記の例を使って運転資金を計算すると売上が倍増した時の売掛金は8、在庫は1、買掛金は4となるので、必要な運転資金は 

8+1−4=5 

となります。 

図で表すと以下のようになります。 

つまり、上記のBSの状態の会社は売上を2倍にすると運転資金は1.7倍に増えることがわかりました。 

仮に売上増加に備えるために在庫を増やすなら運転資金はもっと増えます。 

運転資金がプラスということは前述の通り負債、または純資産から調達しなければいけないお金であることを意味しています。一般的に、多くの中小企業ではこの運転資金を借入金でまかなっています。 

もし仮に運転資金を借入金でまかなっている場合、運転資金が増えるということは借入金を増やさなければいけないということを意味します。上記の例で考えれば、売上を2倍に増やすと借入金は今の1.7倍必要になるということです。 

また、売上を1年で倍増させることはできても純資産は売上と同じペースで増やすことはそう簡単にはできません。 

なので、売上を増やすということはそこで必要になる運転資金を純資産ではなく借入金といった負債でまかなわなければいけない可能性が高いことを意味しています。 

短期的に売上を増やすと財務体質が悪化する可能性があるというのはこれが理由です。 

売上を増やすような次年度予算を組む場合はその運転資金をどこから調達するかも必ず一緒に考えてください。知らぬ間にこのような理由で会社の資金繰りが悪化している可能性があります。売上とセットで運転資金を考えることは非常に大切な経営者の仕事だということがこの例からお分かり頂けたかと思います。 

運転資金をどのように調達すべきかは会社によって変わりますので、残念ながら一概にアドバイスはできません。しかし一般的なアドバイスとしては、運転資金は長期借入金でまかなうことが理想的と言えます。 

運転資金は短期的に必要な資金ではありますが長期で事業を拡大していく、売上が増えていくという会社の前提を考えるのであれば運転資金も長期で調達を考えるのが良いです。 

特にサイト負けが大きくなればなるほど運転資金の金額も大きなものになりますので、長期借入金で十分な資金を調達してその後の利益から何十回かに分割してその借入金を長期で返済していくべきです。 

今回は以上となります。 

少し難しく感じたかもしれませんが、この機会に運転資金について一度時間をとって考えていただければ嬉しいです。 

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本日は以上です。 

今週も一緒に頑張っていきましょう! 

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