財務に関する社長の勘違い

Posted on 28/05/2025

こんにちは。 

ラッセルベッドフォードの澤柳です。 

先日、とある会社の社長と話をしていると、資金繰りが苦しいから売上拡大を進めなければいけないということを聞きました。そこで私はすぐにその会社のBSを見せてもらい財務体質を分析したところ、このまま売上拡大をしたらさらに資金繰りが悪化することがわかりました。

資金繰りが苦しいから頑張って売上を上げる。 

この考え方は一見正しいように見えますが、財務をしっかり理解していないとさらに資金繰りが悪化して最悪の場合は倒産なんてこともあり得ます。今回はそんな会社の社長が陥りやすい財務に関する勘違いについて取り上げます。 

 会社を守るためには強い財務体質が必要です。しかしそれはどんな状態でしょうか? 

・毎年利益がでていること 

・自己資本比率が高いこと 

・流動比率が高いこと 

・・・ 

最初にお伝えしておきますがこれらは全て間違いです。もし一つでも頷いてしまった場合は必ずこのメールを読み進めてください。 

そのような勘違い1つで会社はいつでも傾きます。それでは何が間違いだったのか1つずつ見ていきたいと思います。 

勘違いその1 

「毎年利益がでているから強い財務体質」 

みなさんは黒字倒産という言葉を聞いたことがあるでしょうか。その言葉の通り、利益が出ていても会社は倒産してしまうことがあります。倒産を決断する理由のほとんどは利益ではなく資金(現金)がないからです。つまり、利益と財務体質は直接的に関係しているわけではありません。 

黒字倒産する会社は一般的に借入金が多く儲けの額に見合わない額の固定資産を融資を受けて買っていることが多いです。いざというときに必要なのは現金なのに利益を出すことを考えるあまり、いくら手元に資金が残っているべきかを考えなかった結果が黒字倒産とも言えます。

特に、自己資本比率(*) を30%切っていると借入金や他人資本への依存度は高めなので黒字倒産をするリスクも高いと言えます。 

自己資本(=純資産)は返す必要がないお金 

他人資本(=負債)は返す必要があるお金 

と覚えておいてください。 

返す必要のないお金が多ければ・・・つまり、自己資本比率が高ければ資金繰りに困るリスクは低いと言えます。もし自己資本比率が低い場合は短期的には無駄な資産を減らしたり、他人資本を減らすなどしてBSの整理が重要です。そして長期的には、やはり本業の利益を増やしてコツコツと他人資本を返したり自己資本を増やしていくことが重要です。 

(*) 自己資本比率とは総資本(負債+純資産)のうちどれだけ自己資本(=純資産)が割合を締めているかを表す指標です。 

勘違いその2 

「自己資本比率が高いから強い財務体質」 

それでは利益が出ていて自己資本比率も30%を超えていれば良いだろうと思うかもしれません。しかし、それでもまだ財務体質は強いと言えません。 

まず、自己資本比率の理想は60%以上です。30%を少し超えてるだけでは不十分です。 

 日本のいくつかの銀行では、融資格付けにおいて自己資本比率の項目が60%以上で満点と設定されています。さらに、自己資本比率には今いくら自社が現預金を持っているかという情報が含まれていません。 

自己資本比率とは資本(負債と純資産)の話でどこから資金を調達したかを表す指標です。資産(何に使ったか)の話は含まれていません。例えば自己資本比率が高くても、そのほとんどを固定資産や在庫に費やして、現預金を持っていなければ資金繰りが滞る可能性があります。 

BSの右側(資本)だけでなく、BSの左側(資産)を一緒に考えるのが財務を考えるということです。自己資本比率が高いからといって決して安心しないようにしましょう。 

勘違いその3 

「流動比率が高いから強い財務体質」 

流動比率とはBSの中の流動負債に対してどれだけ流動資産が占めているかを表す指標です。これはBSの右側(資本)だけでなく、BSの左側(資産)と一緒に考える指標で先ほどの自己資本比率の弱点を克服しています。 

一般的な会計の本でも解説されていますが、流動比率が高いということは短期で支払うべき負債よりも短期で現金化できる資産が多いことを意味し、よって会社が健全であるとされています。 

しかし実際のところは、この流動比率だけで会社の健全性を判断することはできません。 

この流動資産には現金以外の資産も含まれており、例えば売掛金や在庫などの金額が大きい場合はこの指標を見て本当に資金繰りが健全かどうかを判断することはできません。 

さらに、流動比率が高く現預金が多い場合でも、まだ資金繰りが健全であるとは断言できません。その現預金は本業によって増えたのか、それとも長期借入金によって一時的に増えたのか。今月の流動比率は高いが来月はどうか、固定負債から流動負債に切り変わるものはないか。現預金が多い、流動比率が高い、だけではこれもまた同様に財務体質が強いと言い切れないことはご理解いただけると思います。 

  以上、今回は3つのよくある勘違いを取り上げましたがまだまだ他にもこのような勘違いは存在します。 

世間一般に思われている「財務体質の強さ」を今回少しでも疑ってもらいみなさんの会社の財務に関してもみなさん自身でじっくりと考えて頂ければ嬉しいです。 

また、最初に挙げた社長の事例で、「売上拡大をしたらさらに資金繰りが悪化した」その理由も是非一度考えてみてください。 

 さて、先月が初回だったバランスシートのオンラインセミナーの第2弾を5月21日(水)14時~15時に開催することが確定しました。今回は『BSから会社を強くしていく(分析編)』です。 

ご興味がある方は是非以下フォームよりお申込み下さい。

今週も一緒に頑張っていきましょう!

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