キャッシュフロー計算書を読む(続2)

Posted on 11/11/2025

こんにちは。 

ラッセルベッドフォードの澤柳です。 

前回のメールに引き続き、今回のメールでもキャッシュフローについて深堀りをしていきたいと思います。前回はキャッシュフロー計算書の中の運転資金に着目したお話をしました。 

運転資金のキャッシュフローは「営業活動によるキャッシュフロー」の項目に記載されていますが、それだけを取り出して読むということは世間ではあまり行われていません。しかし運転資金は会社の事業構造を如実に表し、経営にも大きな影響を与えますので、毎月必ず運転資金に関わるキャッシュフローを読み、理解し、分析できるようにしましょう。 

運転資金の次に私が大事だと思うキャッシュフロー計算書の情報は、「フリーキャッシュフロー」です。 

言葉はどこかで一度聞いたことがあるという方もいらっしゃると思います。 

運転資金と同様に、このフリーキャッシュフローも、キャッシュフロー計算書に直接表示されている訳ではありませんが、経営者の方には毎月必ず確認をして頂きたいものになります。 

フリーキャッシュフローとは、その名の通り会社が自由に使えるお金のことで、「営業キャッシュフロー」+「投資キャッシュフロー」で求められます。 

例えば営業キャッシュフローが100万円あって機械設備に40万円投資をしていたとすると、フリーキャッシュフローは100万円―40万円=60万円となります。 

この60万円は、その会社が自由に使えるお金であり、もし借入金の返済が20万円だったとすれば差し引きで40万円のキャッシュが手元に残ります。 

逆に、このフリーキャッシュフローが10万円しかなかったとすれば、借入金の返済20万円に届かないので、現在の手元にある現金から支払うかもしくは追加の借入金などで賄わないといけなくなります。 

このフリーキャッシュフローを見るポイントは、長期借入金の返済額をフリーキャッシュフローで賄えているかどうか。という点です。以前のメールで、「借入金の返済原資は利益+減価償却費ではない!」というお話をさせて頂きました。 

そこでは難しい言葉は使わず「現金」で返していくという表現をしましたが、厳密にはこのフリーキャッシュフローで借入金を返していくことになります。 

このフリーキャッシュフローのポイントは、主に以下の3つに分類できます。 

1 フリーキャッシュフローの絶対額の確認 

2 借入金返済額とのバランス 

3 資金繰り改善方法の検討 

まず初めにチェックするポイントは、このフリーキャッシュフローがどれだけPL上の純利益額から乖離しているか、です。 

キャッシュフロー計算書を読む目的の一つに、当月(または当期)稼いだ利益がどこに消えていったかを理解する、ということがあります。 

なので、まずこのフリーキャッシュフローが利益と同じぐらいか、もしくはどの程度乖離しているのかを確認してください。 

うまく資金繰り管理ができている会社では、純利益とフリーキャッシュフローの額がほとんどイコールかフリーキャッシュフローの方が大きい状態になっています。 

逆に利益よりフリーキャッシュフローの方が小さい場合は、それだけ資金繰りにリスクがありますので、何が原因でフリーキャッシュフローが小さくなっているのかを分析する必要があります。 

一般的には前回のメールで説明した運転資金のキャッシュフローが大きい場合、つまり、在庫が増えていく傾向であったり、大きなサイト負けの状態であるといった状況が考えられます。 

次にチェックするべきポイントは、借入金の返済額が適切かどうか、です。 

借入金の返済は、キャッシュフロー計算書の中の「財務活動によるキャッシュフロー」という最後の項目に記載されています。 

例えば、毎年の純利益が1000万円程度でありサイト負けや定期的な設備投資などの理由によって年間のフリーキャッシュフローが半分の500万円しかなければ、会社が返済できる金額もその範囲内であるべきです。 

逆にそれ以上の返済額が設定されている場合、会社の資金繰りは慢性的に悪化していき、長期借入金を短期借入金で返すというような悪循環も発生してくるでしょう。 

資金繰りに詰まる会社は、多くの場合、このフリーキャッシュフローの額よりも借入金の返済の方がはるかに大きくなっています。そうならないよう、借入限度額を再検討したり、年間返済予定額が自社の体力に見合っているかどうかを確認し、資金繰りがうまく回るようにバランスをとることが必要です。 

そして最後の重要なチェックポイントとして、フリーキャッシュフローと借入金返済額からどのように資金繰りの改善をすべきかを検討します。 

会社の資金繰りを改善するために、皆さんだったらどこから手をつけるでしょうか? 

純利益でしょうか? 

返済原資を利益だと考えてしまうと、借入金の返済額が多いということは多額の利益を出さなければならないということになります。 

多額の利益を出すためには、大幅な売上増加が必要です。 

しかし多額の利益を出しても、マレーシアでは24%は税金で持っていかれます。 

売上増加には、人件費、経費、在庫増加なども伴うことから、フリーキャッシュフローは逆に減ってしまうでしょう。そうすると借入金返済ではなくて、逆に借入金が追加で必要になってしまうかもしれません。 

よって、既に現金が潤沢にあったとしても、まず初めに考えるのは利益増加以外の方法であるべきです。 

そこで重要になるのがフリーキャッシュフローの変動要因である営業キャッシュフローと投資キャッシュフローです。 

まず営業キャッシュフローでは、前回のメールで解説をした運転資金に関するキャッシュフローを分析し、もっと改善できないかを検討します。 

運転資金は「売掛金+在庫―買掛金」なので売掛金を減らすか(回収タームを短くするか)、在庫を減らすか、買掛金を増やすか(支払いタームを伸ばすか)の検討が必要になります。 

また、別のBS科目の「残高」をチェックして、もっと早く現金化できる資産はないか、または支払いタームをもっと伸ばせる負債はないかを確認します。 

売掛金以外にも未収金といった売上債権以外の流動資産が長期間滞留していることもあります。 

また、保証金の類は一回支払った後、契約が満了するまで現金化できないとされていますが、実際は交渉次第で早く現金化できたりもします。BSの資産や負債の改善から、まずは手元の現金を増やす、ということを検討しましょう。 

次に、投資キャッシュフローの観点から、現在手元にある固定資産で売却できる余剰資産がないかを確認します。借入金が増える一般的な理由としては、運転資金が増えたか、あるいは設備投資が必要になったかです。無駄な固定資産を持っているくらいなら、時価が簿価より下がっていたとしても売却し、手元の現金を増やすことの方がメリットがあります。 

これらBSの改善によって手元の現金を増やすことができれば、次に考えるのは借入金の早期返済です。 

早期返済によって借入金元本を減らし、月々の返済額を返済可能額まで少なくしてもらうよう交渉をします。 

フリーキャッシュフローを増やすという視点、そして借入金返済額をフリーキャッシュフローで賄えるようにバランスをとるという視点の2つから資金繰りの改善をすることが重要です。 

もし仮に借入金が一切ない会社であっても、このフリーキャッシュフローは株主への配当金支払いや、来期以降の投資のために使われることになります。 

そのため、フリーキャッシュフローを増やす、そして手元の現金を増やすということを常に考えて経営をしていく必要があります。 

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今回は以上となります。 

キャッシュフロー計算書に関して、少しでも皆さんの理解を深めて経営に役立てて頂ければ嬉しいです。 

今週も一緒に頑張っていきましょう! 

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